神社本庁統理告辞

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統理告辞

 

 本日、天皇陛下におかせられては、即位の礼をめでたく挙げさせられました。洵に慶祝の極みと、国民斉しく慶びとするところであります。遠皇祖の御代より、天津日嗣のゆるぎなく受け継ぎ伝へ来ませるこの重儀を拝し、併せて来る十一月二十二日・二十三日に亘り、厳しくも御斎行になられます大嘗祭の御儀を思ふとき、皇統連綿として久しく国の風儀を護らせられ、代々天地とともに継承されてゆく君民一体の麗しき姿が実感され、御大典に巡り会へた感激一入のものがあります。

 私共神社関係者にあっては、本日高御座に坐しまして、国民に示し賜はりました深き叡慮を体し、平成の大御代が平和にして豊かな御代として、弥益々に栄へゆくやう斎ひ奉り、神明に仕へ奉る使命の重大なるを痛感するものであります。

 ついては、全国神社関係者の皆様と共に、いよいよ敬神尊皇の志を堅くし、平成の大御代の弥栄を祈念し、祭祀の振興を図るとともに、道義の高揚と四海万邦の平安に寄与して参る決意を新たにするものであります。

 神職及びその他職員関係者にあっても、この佳節を機に、一層研鑽に励み、新たなる世に対応すべき斯界の責務を深く認識し、神明奉仕はもとより、和衷協同、世のため人のために、新たなる覚悟をもって、愈々職務に精励されることを切望します。

 茲に、謹んで聖寿の万歳を寿ぎ奉り、告辞とします。

  

  平成二年十一月十二日

神社本庁統理 細川護貞

 


統理告辞

 

 畏くも 天皇陛下には昨秋、御即位大礼の諸儀を滞りなく執り行はせられ、天地とともに窮りなき天津日嗣のいよいよ堅磐に、大御稜威のますます常磐にましますことは、国民の斉しく慶賀に堪へぬところであります。

 本年は神社本廰が設立されてより、四十五周年を迎へました。この間、神社本廰は、神明の御加護のもと、先人たちが辛苦して取り組まれた目途を継承し、国家民族の根幹にかかはる伝統保全に精励してまゐりました。その成果を修めて、今回国家の大典を慶祝できましたことは寔に悦ばしい限りであります。

 昨今の内外の情勢は転変まことに急激であります。かうした折こそ、私どもは民族の立脚の基盤を改めて確認し、自らの信念を鞏固なものとしなくてはなりません。天皇陛下が親しく御実践遊ばされました御祭りの大御手振りは、まさしく皇位の継承と皇祖神明に御奉仕の聖旨を目のあたりにお示し下されたものと拝されます。

 私どもはこれを機会に、神恩の悠遠と、祭祀の真意とを顕現することに努め、国民精神を昂め、祭祀を振興し、祀職の使命に徹してまゐりたいと存じます。神明の御照覧に応へ、氏子崇敬者とともに祭を興し、祖先を尊んで神社の奉護発展を期してゆくことは、ひとり神社界のみならず我が国の豊かな将来と世界人類の和平、福祉のための道を拓くに違ひありません。

 神社関係者各位には、聖慮を拝し嘉年を迎へ、一層神社本庁憲章を体し、格段の精励努力を期待するところであります。

 ここに、神社本廰設立四十五周年を迎へ、皇統を万世に仰ぎ、神明の照覧に応へるべく、懐ふところを述べて告辞と致します。

  

  平成三年五月二十三日

神社本庁統理 細川護貞

 


統理告辞

 

 昨秋、第六十一回神宮式年遷宮の遷御の儀が、聖慮を奉戴し、国民総奉賛のもと、古式床しく厳粛裡に斎行せられましたことは、洵に慶賀に堪へません。

 御遷宮によって、皇祖皇大御神の広大無辺の御神徳が弥が上にも輝きを増し、赫々たる大御稜威が遍く光被せられる趣を拝して寿ぎ奉り、神宮式年遷宮が、この上とも民族の文化・伝統の基をなし、国家国民の深い認識を得て、式年毎に回を重ね、盛大を極めて真姿奉護を悠久の歴史に留め得るやう祈念するものです。

 この間において、全国神社関係者が、神宮に寄せる国民の赤誠を一つに纏め、御遷宮の奉賛活動を通じて、物心両面に亘る熱意と努力とによって、本宗奉賛の実践に誠を尽くされましたことに対し、深甚の謝意を表しますと共に、我々神職は、神意奉行を旨とし、祭祀の厳修を第一義としながら、御稜威新たな神宮への国民総参宮運動を、より強力に展開し、全国民が挙つて、丹誠を尽して敬拝せられるやう勧め、併せて神宮大麻奉斎家庭増加に斯界の総力を挙げて努め、以て神宮の御神徳の宣揚と御神威の発揚とを促進して、次期式年遷宮の礎を築くと共に、皇国の基盤を鞏固なものとしてゆきたいと願ふものであります。

 めでたく両正宮の遷御の大儀が斎行せられて、はじめての新春を迎へるに当たり、全国神社関係者の新たなる決意と躬行とを切望して、告辞とします。

 

  平成六年一月一日

神社本庁統理 細川護貞

 


統理告辞

 

 神社本庁設立五十周年にあたり、一言所信を申述べます。

 幕末未曾有の国難を乗越え明治維新の大業を達成して以来八十年、わが国は独立自存、万邦共栄の理想を掲げ近代国家の基礎を固めて参りましたが、悲運にも民族の滅亡をも招来しかねかい事態に際会するに至りました。民族の栄光は地に堕ち、屈辱に身も心も圧倒される思ひでありました。国家存亡の危機に瀕して、昭和天皇の国家再建への大御心に奮ひ励まされ、新たなる一歩を踏み出したのです。

 わが民族の精神的基盤であり良風美俗を培ってきた国民信仰は、占領行政により根本的変革を強ひられ、国家の宗祀とされた神社の制度は全廃を余儀なくされました。非常の事態に鑑み、斯界の先人は昭和二十一年二月三日、全国神社の総意に基づき、神宮を本宗と仰ぎ神社本庁を結成致しました。以来、一致協力、悠久の歴史を伝へる神社の使命達成を第一に、国運の振興に邁進して参りました。この間、神明の御加護のもと着実な歩みを重ね、民族の誇りと伝統の回復に努めて参りましたが、未だなほ道遠き感があります。

 ここに神社本庁設立五十周年を迎へて、困難な中に新しき道を拓いた斯道の先覚に深く敬意と感謝の誠を捧げるとともに、私どもの今後の精励恪勤を誓ひたいと思ひます。また、時あたかも五十周年を間近に控へて、神社本庁総裁に神宮祭主池田厚子様をお迎へすることができましたことは、私の最も喜びとするところであります。

 待望久しかった総裁を推戴して、私どもは彌々道を明らかに責務の重さを認識して、更なる歩みを確実たらしめたいと思ひます。神職は率先垂範常に自らを正して、大御心のまにまに伝統を重んじ、氏子崇敬者とともに祭祀の厳修と道義昂揚に一層の努力を傾注し、以て世界の進運に貢献して参りたいと切に願ふところであります。

 

  平成八年二月三日

神社本庁統理 細川護貞

 


統理告辞

 

 神社本庁が設立されてより五十五周年を迎へました。先の五十周年に際し、先人諸賢が数々の労苦のもとに積み上げてきた業績を礎として、更なる一歩を踏み出してより、社会の諸情勢は愈々変転めまぐるしく、全国神社はもとより、国の進み行く道を究めるべき重要な時機を迎へてをります。

 明治の御維新により、近代国家建設への道程を進んできたわが国は、先の大戦において、未曾有の危機に直面しましたが、昭和天皇の万世の為に太平を開かんとの御聖断のもと、国家新生の苦難を経て、予想を越える平和と繁栄は築かれました。然るに戦後五十有余年を経た今日、経済発展の裡に進行した精神文化の荒廃は、深刻な社会病理となって現れてゐます。

 今こそ、この国土に麗しき自然と文化を育んできた祖先の営みに学び、敬神崇祖の正直を道として、皇室とともにある日本国の真姿顕現に努めるべき秋であります。

 時恰も昭和天皇御生誕百年をお迎へし、ひたすら国民の幸福と世界の平和を祈念された御姿を胸に、私ども神社関係者は改めて昭和天皇の御聖徳を偲び奉り、ひとり国家社会のみならず世界人類の福祉増進に寄与すべき責務を深く自覚し、確かな歩みを進めて参りたいと思ひます。ここに本日、設立五十五周年の記念大会に際し、改めて神社本庁憲章を遵守し、大御心の随に祭祀の厳修と道義の昂揚につとめ、神明の導きにより平成の御世の興隆に努めるべく、決意を新たにするものであります。

 

  平成十三年五月二十二日

神社本庁統理 東園基文

 


統理告辞

 

 神社本庁設立六十周年記念大会が、秋篠宮同妃両殿下の台臨を仰ぎ、池田厚子総裁御臨席の下、厳粛且つ盛大に挙行されましたことは、洵に御同慶の至りに存じます。

 顧みれば、神社本庁は昭和二十一年二月三日、終戦直後の混乱期にあつて、占領政策により神社制度の抜本的改革を余儀なくされた全国神社の総意によつて設立され、爾来、神宮を本宗と仰ぎ、斯道の宣揚と全国津々浦々に鎮まります神社の護持発展に努めて参りました。ここに人で言へば還暦にあたる六十周年を無事に迎へることができましたことは、偏に神明の御加護と先人諸賢の努力によるものであります。

 この間、我が国社会は大きく変貌し、殊に近年の道義の頽廃には目に余るものがありました。斯界でも昭和五十五年、神道の精神規範を更めて明文化し、以て次の世代に道統を正しく伝へんとして神社本庁憲章が制定されたのであります。しかしながら今日にあつても、憲章を熟知してをれば起こりえないやうな事例が発生致してをります。これは洵に悲しむべきことであります。

 時恰も、財団法人伊勢神宮式年遷宮奉賛会が結成され、御遷宮の完遂に向けて神社関係者が心を一にして邁進すべき秋にあたります。私ども一人ひとりが襟を正し、更めて神社本庁憲章を遵守する誓ひを新たにし、広く氏子崇敬者と手を携へ、神社の公共性を保持し、我が国の正しい伝統を守り抜かなければなりません。

 以上、設立六十周年にあたつて所懐の一端を申上げ、関係各位の奮起を期待して、告辞と致します。

 

  平成十八年五月二十三日

神社本庁統理 久邇邦昭

 


統理告辞

 

 常陸宮同妃両殿下の台臨を仰ぎ、池田厚子総裁御臨席の下、神社本庁設立六十五周年記念大会が挙行されましたことは、誠に御同慶の至りに存じます。

 神社本庁は、敗戦といふ国史未曾有の難局に直面した先賢の総意により、昭和二十一年二月三日に設立されました。設立以来の年月を振り返るとき、幾多の苦難を克服して、神社護持と斯道発展のため諸政策を推進した先人の深い叡智や行動力に、心からの敬意と感謝を表したく存じます。

 私どもの祖先は、悠久の歴史に培はれた民族の伝統精神を常に尊重し、その歩みを重ねてきました。殊に、明治維新の後は、近代国家の建設を目指して多くの難事業を遂行しましたが、その根底に君民が共に栄えるよき国風があったことを忘れてはなりません。

 去る三月十一日に発生した東日本大震災に際し、天皇陛下には被災者をはじめ全ての国民に対するお言葉を述べられ、両陛下には被災地に行幸啓遊ばされました。多くの人々が、そのお言葉とお姿を拝し、将来への希望と力を得たと伺ってをります。私ども神社関係者は、被災地の復興と祭祀の伝統の継承を祈り、力を尽くしてゆかなければならないものと存じます。

 そのやうな中にあっても、第六十二回神宮式年遷宮は、平成二十五年の斎行に向けて諸事順調に執り進められてゐる旨承ってをります。今次の御遷宮が、天皇陛下の大御心を体した多くの国民の奉賛をもって麗しく斎行され、さらにはその伝統が次の世代に正しく継承されることを願って已みません。

 神社本庁設立六十五周年にあたり、関係各位の益々の発展と奮起を願ひ、所懐の一端を申上げ告辞と致します。

 

  平成二十三年五月二十五日

神社本庁統理 久邇邦昭

 


統理告辞

 

 第六十二回神宮式年遷宮遷御の儀が、昨秋、皇大神宮、豊受大神宮において古式床しく厳粛裡に斎行されましたことは、慶賀の至りに存じます。

 顧みますと、平成十六年に聖上の御聴許を拝してより、全国神社関係者をはじめ関係諸団体は相協力して万全な奉賛体制の確立につとめて参りました。そして、凡そ八年の歳月を経て国民総奉賛の機運の昂まりの下、大きな成果を上げていただきました。

 先の大戦を経て、神宮式年遷宮は聖旨奉戴のもとに、国民奉賛によって準備が進められることとなりました。そして、戦後の混乱期から六十有余年の間、社会環境が著しく変化する中で四度の御遷宮が斎行されて参りました。さうした中、この度の御遷宮にあたりましては、古儀に従って厳格に伝統を継承することに最善を尽くされ、関係者一丸となって粛々とご準備をお執り進めになられました。御遷宮に込められた人々のかうした祈りが、日本人の心として社会にも広く伝播したことは、大きな意義があったものと存じます。

 次の御遷宮へ向けて環境を整へてゆく取り組みは、すでに始まってゐます。この度の成果を礎として、国民総参宮と神宮大麻奉斎を柱とする奉賛活動に力を注ぎ、これからも社会情勢や人々の意識の変化に柔軟に対応しつつ、着実な歩みを進めてゆくことが私達に課せられた使命であると存じます。

 大神様の神慮を畏み、全国津々浦々の神社のご社頭の隆盛を祈りつつ、次期遷宮元年を迎へての告辞といたします。

 

  平成二十六年一月一日

神社本庁統理 北白川道久

 


統理告辞

 

 新緑眩い五月、神社本庁設立七十周年記念大会が秋篠宮同妃両殿下の台臨を仰ぎ、池田厚子総裁御臨席のもと挙行されましたことを洵に悦ばしく思ひます。

 顧みますと、終戦直後の昭和二十一年、占領政策により神社界は存続の危機に直面しましたが、古より連綿と培はれてきた民族の伝統を断じて絶やすことはできないとの信念を掲げ、神社存立と道統の護持のため、全国神社関係者の総意のもとに神社本庁は設立されました。その当時に思ひを致す時、難局を乗り越えて設立へと導かれた先人諸賢の並々ならぬ御労苦に対し、今に生きる私たちは深い感謝を禁じ得ません。

 先月十四日に発生した熊本をはじめとする九州地方の地震以降、度重なる地震に見舞はれてをります。天皇皇后両陛下におかせられましては、被災者に対して大御心をお寄せ遊ばされ、誠に有難いことと存じます。被害に遭はれた方々に対し慎んでお見舞い申上げます。

 我が国は、古より、地震、火山、風水などによって人々が苦しめられてきた歴史を持つ世界有数の自然災害国です。有史の間には幾度も自然災害が発生しましたが、先賢はその度ごとに、皆相集ひて叡智を出して諮り合ひ、力を合はせて幾多の困難を乗り越えて今日を迎へてゐます。これからも私たちは先賢の手習を受け継ぎ、良き伝統を継承して参りたいものです。

 神社本庁は設立七十周年になりましたが、向後の設立百年に向けて常に時代を意識しつつ、伝統の継承と斯界の役割について絶えず探求して参りたく存じます。

 神社本庁設立七十周年にあたり、関係各位の益々の発展を祈り、所懐の一端を申上げ告辞と致します。

 

  平成二十八年五月二十五日

神社本庁統理 北白川道久