神社本庁憲章について

 

 

神社本庁憲章は、神社祭祀の伝統と神社本庁の歩みをふまえ、多くは不文のまま実践されてきた基本的な精神規範をあらためて明文化し、以て次の世代に道統を正しく伝えるために昭和五十五年に制定されました。

尚、憲章の他に、宗教法人としての規則として神社本庁庁規が定められています。

 

以下にその全文を記します。


神社本庁憲章

   昭和五十五年五月二十一日 評議員会議決

 

 神祇を崇め、祭祀を重んずるわが民族の伝統は、高天原に事始まり、国史を貫いて不易である。夙に大宝の令、延喜の式に皇朝の風儀は明らかであるが、明治の制もまた神社を国家の宗祀と定めて、大道はいよいよ恢弘された。

 しかるに、昭和二十年、未曾有の変革に遭ひ、皇典講究所、大日本神祇会、神宮奉斎会は、その対応を相議り、神祇院総裁もまた爾後の措置をこの三団体に委ねた。ここに神社関係者の総意によって、全国神社を結集する神社本庁が設立され、神宮を本宗と仰ぎ、道統の護持に努めることとなった。 爾来、神社本庁は、全国神社の包括法人として、庁規を中心に運営されてきたが、今日まで重要な懸案とされてきたのは、精神的統合の紐帯として、基本的規範を確立整備することであった。

 よって、ここにその大綱を成文化して本憲章を制定し、以て神祇の祭祀を継承するに遺憾なきを期するものである。

 

第一条 神社本庁は、伝統を重んじ、祭祀の振興と道義の昂揚を図り、以て大御代の彌栄を祈念し、併せて四海万邦の平安に寄与する。

第二条 神社本庁は、神宮を本宗と仰ぎ、奉賛の誠を捧げる。

 2 神社本庁は、神宮及び神社を包括して、その興隆と神徳の宣揚に努める。

第三条 神社本庁は、敬神尊皇の教学を興し、その実践綱領を掲げて、神職の養成、研修、及び氏子・崇敬者の教化育成に当る。

第四条 神社本庁は、総裁を推戴する。

 2 総裁は、神社本庁の名誉を象徴し、表彰を行ふ。

第五条 神社本庁に統理以下の役員、その他の機関を置く。

 2 統理は、神社本庁を総理し、これを代表する。

 3 第一項の役員、その他の機関については、規程で定める。

第六条 祭祀は、報本反始の誠を捧げ、古来の伝統と、別に定める制規に従って厳修する。

第七条 神社本庁は、幣帛共進の伝統を重んじ、神社に本庁幣を献ずる。

第八条 神社は、神祇を奉斎し、祭祀を行ひ、祭神の神徳を広め、以て皇運の隆昌と氏子・崇敬者の繁栄を祈念することを本義とする。

 2 霊代の神聖は、厳に護持しなければならない。

 3 神符、守札等の取扱ひについては、信仰上の尊厳を汚してはならない。

 4 一社伝統の故実、慣習、由緒は、尊重するものとする。

第九条 神社は、祭神、社名、例祭日、鎮座地、その他神社存立の基本に関はる事項については、統理の承認を受けなければならない。

第十条 神社の境内地等の管理は、その尊厳を保持するため次の各号に定めるところによる。

 一 境内地は、常に清浄にして、その森厳なる風致を保持すること。

 二 境内地、社有地、施設、宝物、由緒に関はる物等は、確実に管理し、みだりに処分しないこと。

 三 境内地及び建物その他の施設は、古来の制式を重んずること。

 四 前号の施設は、神社の目的に反する活動に利用させないこと。

第十一条 神職は、ひたすら神明に奉仕し、祭祀を厳修し、常に神威の発揚に努め、氏子・崇敬者の教化育成に当ることを使命とする。

 2 神職は、古典を修め、礼式に習熟し、教養を深め、品性を陶冶して、社会の師表たるべきことを心掛けなければならない。

 3 神職は、使命遂行に当って、神典及び伝統的な信仰に則り、いやしくも恣意独斷を以てしてはならない。

第十二条 宮司は、一社の長として、祭祀に管掌し、社務をつかさどり、神社の信仰と伝統の護持に努める。

第十三条 神社総代は、神社の祭祀、信仰、伝統の保持振興について宮司に協力する。

第十四条 神社の氏子区域は、神社ごとに慣習的に定められた区域をいふものとする。

 2 氏子区域は、神社相互に尊重しなければならない。

第十五条 氏子区域に居住する者を伝統的に氏子とし、その他の信奉者を崇敬者とする。

 2 氏子・崇敬者は、神社護持の基盤であり、斯界発展の母体である。

第十六条 神社本庁の宗教法人法による規則を「庁規」といふ。

第十七条 庁規及び規程等は、この憲章に準拠しなければならない。

第十八条 この憲章の改廃については、統理の発議により、評議員会において、出席評議員の三分の二以上の賛成を必要とする。

第十九条 この憲章の施行に関し必要な事項は、庁規及び規程を以て定める。

 

   附 則

 1 この憲章は、昭和五十五年七月一日から施行する。

 2 宗教機能に関する規程(昭和二十七年一月二十七日規程第一号)は、廃止する。

 3 この憲章施行の際、庁規及び従前の規程等は、この憲章に基いて定めたものとみなす。